「鹿骨・鹿見塚」と「鹿島神宮・春日大社」との深い縁~鹿は神の使い
江戸川区には、「鹿骨」という少々読みづらい地名があります。これは「しかほね」や「しかぼね」ではなく、「ししぼね」と読みます。
今回は、この「ししぼね」の由来と「ししぼね」の地名の発祥の地である鹿見塚神社(江戸川区鹿骨3-1-1)を紹介したいと思います。
この鹿見塚神社は、江戸川区の真ん中を南北に流れる新中川の東側にあります。環状七号線から鹿本橋を渡り、さらに鹿骨街道を進みます。鹿骨区民館入口の交差点を過ぎて二つ目の前沼橋交差点と鹿骨親水緑道が交わる場所です。
鹿見塚神社 ししみづかじんじゃ
この神社の間口は二間ほど、奥行き十間弱の小さな神社です。自動車や路線バスで注意せず通り過ぎてしまうと、見過ごしてしまうかもしれません。交差点には「鹿見塚神社」という名前はありません。
鹿見塚神社の近くの鹿骨親水緑道
住宅街のなかにある、とても小さな神社なのですが、この神社は、奈良の春日大社と常陸の鹿島神宮、下総の香取神宮にとても縁が深い神社なのです。
奈良の春日大社といえば、春日山を背景に奈良公園内にある神社です。世界遺産「古都奈良の文化財」に含まれ、1250年以上の歴史をもつ日本有数の神社です。
8世紀の奈良時代、藤原氏が奈良の春日大社の創建時に鹿島、香取の神様を勧請(他の地に移して祀ること)するため、白い鹿の背中に御分霊をのせ、多くの神鹿とともに一年かけて奈良に向かいました。その途中、鹿骨の地で神鹿が病に倒れたため村人たちはこれを奇縁と思いこの地に葬り塚を建てました。
この出来事が「鹿骨」の地名の由来であるとされています。
「鹿見塚神社」の鳥居をくぐると境内右手に「鹿骨発祥の地」の石碑が建てられています。
鹿見塚神社の鳥居
鹿島神宮と日本国のはじまり
「鹿見塚神社」と縁のある鹿島神宮は、日本国のはじまりと深い関わりがあります。
遥か神世の昔、天の神の国、高天原(たかまがはら)を治めていた天津神(天の神)天照大神(あまてらすおおみかみ)は、葦原中国(あしはらのなかつくに/現在の日本)は自分の息子が治めるべきと考えました。
そこで、国津神(地の神)の大国主神(おおくにぬしのかみ)のもとに話し合いのための特使を向かわせました。しかし、その話し合いはことごとく決裂してしまいます。天照大神は八百万神(やおよろずのかみ)と相談し、経津主大神(ふつぬしのおおかみ)とともに武甕槌大神(たけみかづちのかみ)の二人を最終特使として、大国主命のもとに向かわせました(天界から降り立ったところが鹿島市の明石海岸とされています)。この二人の神は天照大神の命を成就し、宮崎の高千穂から多くの神が降り立ち、日本に平定がもたらされたのです。
その後、神武天皇の即位の年(皇紀元年)に、鹿島神宮(祭神 甕槌大神)が創建され、のちに利根川をはさんで香取神宮(御祭神 経津主大神)が建てられました。鹿島神宮は日本創建の歴史と同じ長さの歴史をもつ神社なのです。
神宮の鹿は神の使い
武甕槌大神 (たけみかづちのかみ) 、経津主大神 (ふつぬしのおおかみ) が手紙のやり取りのために鹿を使っていたとの言い伝えがあり、神宮の鹿は神の使いとされています。
鹿骨鹿島神社( 江戸川区)
鹿見塚神社から少し離れたところに「鹿骨鹿島神社」があります。鹿骨新橋から東に向かうと、鹿島神社前交差点がありますのでこちらは分かりやすいと思います。
「鹿骨鹿島神社」に向かう参道が途中で、道路によって途切れているのは残念ですが、もちろん境内の右手には神鹿(像)がおります。
以前、鹿島神宮に参拝したことがあります。鹿島神宮の大鳥居をくぐって奥の宮まで一直線に荘厳で神秘的な参道が続き、その途中に神使いの鹿が迎えてくれる鹿園があったと記憶しています。鹿島神宮の鹿のご先祖が江戸川区の「鹿骨の地」を奈良の春日大社へ行列して通っていたとは、なんともロマン溢れる話です。
「鹿見塚神社」を訪ねてみて、鹿骨の地と深い、深い縁がある鹿島神宮、さらには香取神宮にもあらためて参拝したいという思いが強くなりました。
天界から日本平定の特使の神様が降臨した日本の始まり地。パワースポットの宝庫。私も、特使として善い運を江戸川区に持ち帰ってこれるといいのですが・・・。
鹿島神宮から春日大社までの道のり
Googleマップで、茨城県の鹿島神宮から奈良県の春日大社までの道のりを調べてみました。距離は582キロメートル。徒歩で124時間かかると表示されました。道が整備された現在においても、1日5時間歩いて約25日かかります。
当時の旅は1年計画でした。582キロメートル÷365日=1.59キロメートル
1日1.5キロメートルしか進めない旅です。道を切り開きながらの命がけの旅だったことが容易に想像がつきます。
「日本国のはじまり」の話に登場する神様と場所
天津神(てんつかみ) | 日本神話に登場する神の分類の天界にいる神 |
国津神(くにつかみ) | 地上に現れた神々 |
天照大神(あまてらすおおみかみ) | 天津神の代表的な神様、天皇の祖神 伊勢神宮の祭神 |
大国主神(おおくにぬしのみこと) | もともとは、高天原にいたが、地上に降臨した国津神の代表的な神、広く大黒さまと呼ばれている。 |
武甕槌大神(たけみかづちのおおかみ) | 鹿島神宮の祭神、天照大神の命を受け鹿島に降り立ち大国譲りの調整をした。 |
経津主大神(ふつぬしのおおかみ) | 香取神宮の祭神、武甕槌大神とともに大国主神と国譲りの調整をした。 |
神武天皇 | 天皇家の先祖 |
高天原(たかまがはら) | 神々が住んでいるところ |
葦原中国(あしはらのなかつくに) | 現在の日本 |