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江戸川区ハザードマップ 台風19号(2019)から学ぶこと

江戸川区ハザードマップ 台風19号(2019)から学ぶこと

2019年に江戸川区は、区内全世帯に対して『江戸川区ハザードマップ』を配布しました。このマップは、一時期インターネット上でも「ここにいてはダメです」というフレーズで話題になりました。このフレーズのインパクトにより『江戸川区ハザードマップ』の認知度は確実に向上しました。

江戸川区は2008年にも『洪水ハザードマップ』を発行しています。2019年版は11年ぶりの発行となります。

>>>「2019年の台風19号への江戸川区の対応から学ぶこと」を見る
>>>「江戸川区 水との闘いの歴史(明治~昭和時代)」を見る

画像 2019年版と2008年版の『江戸川区ハザードマップ』
2019年版と2008年版の『江戸川区ハザードマップ』

ハザードマップとは何か

国土交通省国土地理院ホームページには、「ハザードマップ」は以下のように定義されています。

「自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図」とされています。このハザードマップは、その地域の土地の成り立ちや災害の素因となる地形・地盤の特徴、過去の災害履歴、避難場所・避難経路などの防災地理情報にもとづいて作成されています。が必要となります。

江戸川区ハザードマップ(2019年版)

目次

  1. 【STEP1】知る・気づく・・・江戸川区で水害が発生したらどうなるのかを知る
  2. 【STEP2】考える・決める・・・広域避難先・避難方法を事前に考える
  3. 【STEP3】備える・・・非常持ち出し品を準備する
  4. 【STEP4】想う・伝える・・・一緒に避難する人を確認する

江戸川区には関東に降った雨水が集まる 陸域の70%がゼロメートル地帯

江戸川区には、荒川、中川、江戸川、旧江戸川、新中川、旧中川が流れています。南には東京湾があります。区の陸域の70パーセントゼロメートル地帯です。

江戸川区はゼロメートル地帯かつ河川が多いことから、埼玉県、群馬県、栃木県に降った雨水が集まります。
・埼玉県に降った雨の半分以上が荒川を通じて、江戸川区に集まる
・群馬県・栃木県に降った雨のほとんどが利根川に流れ、その3分の1が江戸川に流れる

雨水が集まるということを認識しておくことが重要です。

大雨・水位情報の調べ方

>>>「気象庁ホームページ」を見る(外部サイト)
>>>「国土交通省川の防災情報」を見る(外部サイト)
>>>「江戸川区気象情報システム」を見る(外部サイト)

画像 『江戸川区ハザードマップ』
関東地方に降った雨の大半が集まる 『江戸川区ハザードマップ』p.3

江戸川区民が警戒すべきは大規模水害

関東地方の雨水が集まるという特徴をもつ土地のために、必然的に内水氾濫、外水氾濫のいずれもが発生する可能性が高くなります。

内水氾濫は、降った雨を排水処理できなく、建物や土地・道路が水につかってしまうことです。小規模ですが、いたるところで発生する可能性があります。外水氾濫は、河川の堤防から水が溢れ又は破堤して、家屋や田畑が浸水すること。大規模災害につながります。

江戸川区で警戒しなければいけないのが、この外水氾濫による大規模な水害です。

ハザードマップには江戸川区で想定し得る最大規模水害【1000年の一度のレベル】が掲載

  • 江東5区(江戸川区・葛飾区・足立区・江東区・墨田区)のほとんどが水没する規模の水害
  • 250万人の家屋が浸水する規模最大10メートルの浸水・2週間以上の浸水が続く規模の水害

    この規模の水害が発生すると予測されるときに、広域避難(=「ここにいてはダメです」)が必要となります。

2015年の水防法の改正

2019年版の『江戸川区ハザードマップ』では、江戸川区で想定し得る最大規模の水害(1000年に一度)が載っています。これは、2015年(平成27)に、水防法の改正が背景にあります。この改正では、想定し得る最大規模の洪水、内水、高潮に対する避難体制の充実・強化が重視されました。

>>>「水防法の改正について見る(国土交通省ホームページ)(外部サイト)

大規模水害が予測されるとき

どのような情報を、どのように判断すればいいのか。

  • 前日までの予測や当日集めた台風情報・避難情報をどのように判断するのか
  • どのような情報を受け取ったときに、どのように行動するのか
  • どこに、どれだけの雨が降ったら江戸川区内のどの川が氾濫するのか(予測困難)
  • すべてのケースをシミュレーションすることは不可能(ハザードマップには載ってはいない)

人は過去の経験から判断する傾向にある

日本全国各地で水害被害にあった多くの経験者は「自分の経験に基づいて判断すること」に対して警鐘を鳴らしています。昨今では、これまで経験がしたことがない雨が降っています。これを数十年の期間における自らの経験に基づいて判断することが危険だということです。また、同時にかつてその地域で発生した水害規模が判断の材料になりにくいということです。

自治体のハザードマップが「想定し得る最大規模の水害」を住民に伝えるのは、この経験というものがいかに頼りないものであるかを認知してもらうことにあると思います。

>>>「江戸川区 水との闘いの歴史(明治~昭和時代)」を見る

避難の目安となる河川の水位観測所

画像 避難の目安となる河川の水位観測所
避難の目安となる河川の水位観測所 『江戸川区ハザードマップ』p.20

広域避難・避難方法

『江戸川区ハザードマップ』では、「江戸川区外の親戚・知人宅や宿泊施設・勤め先などを広域避難所として決めておきましょう」と書かれています。また、「渋滞を避けるため、公共交通機関での避難方法を決めておきましょう。」とあります。

広域避難ができない場合は垂直避難

広域避難ができないため、近くの避難できる場所へ避難します。『江戸川区ハザードマップ』では、「地域防災拠点、待避施設(小中学校)や、近くの頑丈な建物の浸水しない高いところ」とあります。

地域防災拠点とは、洪水等の大規模災害時にも安全性が高い、高台避難地のことです。江戸川区内の地域防災拠点は以下の3つの地域です。
大島小松川公園
葛西南部地区
国府台台地

画像 江戸川区の地域防災拠点
江戸川区の地域防災拠点 『江戸川区ハザードマップ』p.13

大雨・水位情報の調べ方

>>>「気象庁ホームページ」を見る(外部サイト)
>>>「国土交通省川の防災情報」を見る(外部サイト)
>>>「江戸川区気象情報システム」を見る(外部サイト)

江戸川区役所前にある荒川の水位表示塔

荒川河川水位表示塔 は、2009年(平成21)に江戸川区における水への備えの重要性をお知らせするために作られました。

画像 荒川水位塔
江戸川区役所前に設置された荒川水位塔
画像 大潮の満潮位
大潮の満潮位

江戸川区で想定し得る最大規模の水害には広域避難を

広域避難は、『首都圏大規模水害対策大綱』(中央防災会議,2012)のなかで、被害軽減の有効な方法として提示されています。この大綱のなかでは、広域避難のためには以下のことが要請されています。

  1. 広域避難の方針を検討する
  2. 自治体は周辺地域の自治体との間で整合性のとれた避難シナリオを作成する
  3. 自治体は周辺地域の自治体との間で整合性のとれた避難計画を策定する
  4. 膨大な避難者の移動、搬送対策を検討する

項目1の広域避難の方針を決めることはできると思いますが、項目2以降では、整合性のとれたシナリオ、地区の避難方針、避難対象者の属性や人数、避難開始時期、広域避難時の一時集合場所や最終的な受入先、避難ルート、移動手段等に関する計画、実際の移動・搬送手段に関しては、さまざまな課題があると思われます。

2019年10月12日の台風19号から学ぶこと

2019年10月12日に関東地方に上陸した台風19号は各地に甚大な被害をもたらしました。

江戸川区公式ホームページ上では、台風19号への対応経過江戸川区の台風19号への対応を時系列で追ってみます。ここでは江戸川区公式ホームページおよび東京新聞2019年10月31日の『東京新聞TOKYOWeb』の記事を参考にしました。この記事では、江戸川区が公表した情報のほか、他の新聞社等の情報ソースを含めて整理しました。

江戸川区の台風19号への対応(時系列)

10月8日:気象庁「台風の進路が関東に接近する予想にまとまりつつある」。

【江戸川区の対応】
江戸川区は各部署で情報を共有して対応する「情報連絡態勢」を設置。

10月10日:気象庁「台風は中心気圧915ヘクトパスカルで大型。今後950ヘクトパスカル程度の非常に強い勢力を保ったまま(西日本から東日本に)接近する恐れ」。

【江戸川区の対応】
江東5区(墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区)で情報を共有。広域避難の発令基準である930ヘクトパスカルより台風の中心気圧が高いため、高潮による氾濫の可能性は低いと判断。

10月11日:気象庁「荒川流域(※)の3日間総雨量が400ミリメートルを超える可能性あり」。「上陸時の台風の中心気圧は950ヘクトパスカル予想」。

※ここでの荒川流域とは、岩淵地点上流域(『東京新聞TOKYO Web』より)

岩淵水門は東京都北区にある荒川と隅田川を仕切る水門です(荒川と隅田川の分岐点にある水門)。

>>>「岩淵水門ライブカメラ映像」を見る(国土交通省関東地方整備局荒川河川事務所)

【江戸川区の対応】

  • 8時30分:防災対策会議を実施
  • 14時:江東5区(墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区)で共同検討開始
  • 16時:防災対策会議を実施

    「自主的広域避難情報」は発令されませんでした
    「自主的広域避難情報」((=住民に5区の外へ避難を呼びかける)は「三日間で500ミリメートル」という予報が出た場合に発令されると計画されていました。

10月12日:気象庁「荒川流域の3日間総雨量が500ミリメートルを超える可能性もある」(7時15分)。

【江戸川区の対応】

  • 8時:「災害対策本部」を設置
  • 9時45分:避難勧告を発令(新中川以西)。避難所を開設
    ※江戸川区では105か所の避難所に約35,000人が避難

「広域避難勧告」は発令されませんでした
「自主的広域避難情報」より一段階強い「広域避難勧告」は「三日間で600ミリメートル」という予報が出た場合に発令されると計画されていました。

台風が上陸した12日の20時50分ごろに荒川の水位観測所の水位は4メートルに達しました。荒川から大量の水が流入して隅田川が氾濫するのを防ぐため、通常は開けている岩淵水門を21時17分に閉鎖しました。岩淵水門の閉鎖は、2007年9月の台風9号以来12年ぶりでした。

参考:『東京新聞TOKYO Web』2019年11月8日

>>>「荒川(荒川放水路)の歴史と風景 旧岩淵水門と荒川河口」を見る

10月13日:気象庁「荒川流域での三日間の総雨量は423ミリメートル」(18時)

予測は600ミリメートルでしたが、最終的には423ミリメートルでした。

台風19号の経験から学べること

台風19号への江戸川区の対応から、気象庁が発表する「荒川流域の三日間の総雨量の予想情報」を知ることが把握することが重要であることがわかりました。

台風接近時には、情報が錯綜して、どの情報が最新なのか、どの情報が信頼できるものなのかがわからない状況になりますので、まずは気象庁ホームページで荒川流域での雨量を確認することが重要だと思います。

荒川流域に三日間で500ミリメートルを超える予想の場合

「自主的広域避難情報」が発令される可能性があります。

荒川流域に三日間で 600ミリメートルを超える予想の場合

「広域避難勧告」が発令される可能性があります。 『江戸川区ハザードマップ』の23ページには、荒川流域の72時間総雨量が632ミリメートルの際の荒川洪水浸水想定区域図があります。

利根川流域の総雨量にも着目 江戸川の氾濫予想

利根川流域、八斗島上流流域の72時間総雨量491ミリメートルの場合の江戸川洪水浸水想定区域図は『江戸川ハザードマップ』の25ページにあります。

八斗島(やったじま)とは

八斗島町は群馬県伊勢崎市にあります。ここには、利根川八斗島水位観測所ライブカメラが設置されていて、10分間隔の静止画のライブ映像が配信されています。国土交通省関東地方整備局利根川上流河川事務所による配信です。

>>>「利根川八斗島水位観測所ライブカメラ映像」を見る( 国土交通省関東地方整備局利根川上流河川事務所)

大規模災害には広域避難が有効であるが・・・ 課題も多い

首都圏大規模水害対策大綱(中央防災会議2012)における広域避難の位置づけ

広域避難は、『首都圏大規模水害対策大綱』(中央防災会議,2012)のなかで、被害軽減の有効な方法として提示されてはいますが、地区の避難方針、避難対象者の属性や人数、避難開始時期、広域避難時の一時集合場所や最終的な受入先、避難ルート、移動手段など、まだまだ課題が多い方法です。この大綱のなかでは、広域避難のためには以下のことが要請されています。

  1. 広域避難の方針を検討する
  2. 自治体は周辺地域の自治体との間で整合性のとれた避難シナリオを作成する
  3. 自治体は周辺地域の自治体との間で整合性のとれた避難計画を策定する
  4. 膨大な避難者の移動、搬送対策を検討する

NHKによる広域避難に関する解説記事

NHK公式ホームページ「解説委員室」では”「台風19号 問われた『広域避難』」(時論公論)”と題して広域避難の課題を総括しています。

  • 江東5区では避難所の収容能力などから広域避難の呼びかけ対象は137万人と膨大な人数です。対象を絞り込んだり、優先順位をつけたりすることはできないか、検討が必要でしょう。
  • 計画運休を考慮した移動手段の確保、情報伝達など自治体と国、関係機関でシミュレーションを重ね、現実的な誘導策を示していく必要があります。
  • 呼びかけるタイミングも難しいことがわかりました。基準に達しなくても、早い段階から避難ができる人から広域避難を勧める、柔軟が運用も必要かもしれません。
  • 住民も避難所には限りがあり、避難場所を自ら確保し自分の身を守らなければならないこと、きびしい現実ですが、これを知っておく必要があるでしょう。

広域避難には難問が山積していますが、何もしなければ最悪の被害が避けられない一方、広域避難をする人が多くなれば全体の被害を小さくできる可能性があります。今回の経験を活かしてできる手立てを進めることが大切になります。

>>>「台風19号 問われた『広域避難』」(時論公論)を見る(NHK公式ホームページ「解説委員室」(外部サイト)

しのざき文化プラザ企画展示『江戸川区ハザードマップ』

2019年11月9日~2020年2月9日まで江戸川区ハザードマップの理解を深めるために、しのざき文化プラザで企画展示が行われました。

企画 しのざき文化プラザ企画展示『江戸川区ハザードマップ』
しのざき文化プラザ企画展示『江戸川区ハザードマップ』

この企画展では、『江戸川区ハザードマップ』の目次にあるように、

  1. 【STEP1】わが家の広域避難計画
  2. 【STEP2】考える・決める・・・広域避難先・避難方法を事前に考える
  3. 【STEP3】備える・・・非常持ち出し品を準備する
  4. 【STEP4】想う・伝える・・・一緒に避難する人を確認する

【STEP1】わが家の広域避難計画

画像 ハザードマップで自宅のリスクを把握します
ハザードマップで自宅のリスクを把握します
画像 避難先を自分たちで探します
避難先を自分たちで探します
画像 しのざき文化プラザ企画展示『江戸川区ハザードマップ』 展示
しのざき文化プラザ企画展示『江戸川区ハザードマップ』
画像 広域避難計画(記入例)
広域避難計画(記入例)

この企画展示は、『江戸川区ハザードマップ』を理解するためにとても役に立ちました。 今回の展示をホームページで公開するか、冊子の作成をお願いしたいと思います。また、他の会場でもぜひ開催してほしいと思います。

-江戸川区の川・海

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